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ALADJINを聴覚障害児教育の領域から読み解く

言語発達研究の立場から

齋藤 佐和 先生(目白大学)

齋藤佐和先生の写真

齋藤 佐和先生

図5(クリックで拡大)

齋藤佐和先生図5

 

図6(クリックで拡大)齋藤佐和先生図6

 生活言語獲得については、今やゼロ歳代に発見される時代となったので、どういう道に進むにしてもかなりの時間を充てられるようになりました。だからこそできるだけ子どもの個性にあった日本語習得の方法を探すこと、子どもにとってはより楽な指導をしっかりやってあげる必要があります。

 本来の意味で言語が「ものを言う」(力を発揮する)ことについては、生活言語習得の段階では気づきません。生活言語がレベルアップする段階では、言葉でいろいろなことがわかるようになるから言葉の意味がわからないことに気づくし、ことばを構成する音にも意識が向いてきます。

 そのレベルに引き上げていくためにどういうやりかたをするか。介入プログラムだけではありません。それが有効な場合もありますが、子どもがよくわかっている状況の中で日本語を使いこなす経験を多くしてあげて欲しいです。その経験を積むと、しだいに分からないことを言語でわかる段階にいく方略が身につきます。最終的には読み書き能力があってはじめて、一般に通用する情報を言葉で取り込むようになります。それには長い年月が必要で、小学生から大学生までずっとかかることです。段階にあわせた着実な日常的働きかけと、個別の能力にあわせた指導プランの2本立てが必要なのではないでしょうか(図5・PDFが開きます)(図6・PDFが開きます)

 個別プランをたてて、教科書とは違う生活の言葉のレベルをあげることも大切にしたい。言葉というのは、何について語っているかが重要です。最初は目の前にあることや経験ではっきりわかってイメージがあること。次は自分の経験ではないが、人の話からイメージできること、やがて知識にかかわることへと拡がっていきます。これが小学校低学年ころまでに起こってきます。

 その移行で苦労するので、9歳レベルの峠と言われてきました。幼児期後半からの話し言葉の発達の節目(5歳の坂)に読み書きが加わり、暫くは一緒につづき、やがては読み書きが新しい言葉を覚えるための主流になっていく。そこに本格的に入るのが9歳の峠。我々はその大きな流れを意識する必要があります。理想的にいえば生活言語をしっかり育てて、かためて、読み書きに結びつけていくと、学習言語獲得は円滑になるし、教科学習もきちんと進められると思います。

 ただ、語彙は続けて勉強していくべきもので、一生学び続けるものと考えられるので、学習言語を覚えた後も生活で使えるように働きかけることは大切で、聴覚障害児の周りにいるものにとって継続していきたいことです。子どもたちが読み書きを通じて自分で言葉を増やす時が来たら、彼ら自身での獲得に任せていきたいと思います。