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ALADJINを聴覚障害児教育の領域から読み解く

聾教育の立場から

中井 弘征 先生(奈良県立ろう学校)

中井弘征先生の写真

中井 弘征先生

 聾教育の現状からはじめに話します。1つめ、子どもの実態やニーズが多様化してきています。手話の必要な子どもがいます。聴覚主体の子どももいます。軽度・中等度難聴や人工内耳など、聴覚主体の子どもたちがいます。重複障害や発達障害など、特別な配慮や支援が必要な子どもも増えてきています。

 2つめです。手話の活用がすすむと同時に、手話で育った子どもたちの日本語の力への関心が高まり、日本語の力をどうつけて、どう育てていくかが大きな課題になっています。

 3つめは、人工内耳の普及です。聾学校にも随分と人工内耳のお子さんが増えてきています。性能が向上し、手術は低年齢化しています。愛媛大学の2010年の高橋信雄先生の調査では、聾学校全体の約15%、幼稚部では約30%が人工内耳の子どもたちです。幼稚部の子どもがあがっていけば、比率は増えていくだろうと思います。

 報告書を読んで着目した点があります。語音明瞭度・発音明瞭度と日本語発達との関係についての報告です。これらの相関が高いという結果でした。この結果をうけて、これは私なりの解釈ですが、手話が主たる子どもにとっても、日本語を身につけていくためには「聴覚活用や発音・発語の活動は重要である」ということです。手話があるからいらないということではありません。ただし、全ての子どもに「明瞭さ」を求めるのではなく、日本語の音韻を意識し日本語を身につけていくために重要な活動だと考えているのです。聴覚ー音声回路が使える・使えない、手話を使う・使わないに関わらず、日本語の音韻やしくみ(文法)を意識し、理解し覚え使用していく必要があります。そのためには、口声模倣や発音・発語、音読などによる活動を新しい視点で見直すべきだと考えています。耳と声で、目と身体でフィードバックし日本語を使う、大事なことではないでしょうか。

 着目点2。「構文別の獲得年齢と順序について」の報告です。小学校低学年から中学年の間に構文の獲得につまずき、十分な構文の力を持たないまま学習を受けている児童が多いという示唆です。これについては、教科学習を進めながら、一方で継続的な構文指導の取り組みが必要です。担任だけではなく、学部全体での継続的な取り組みが必要だと思います。

 その他では、読み書き障害のスクリーニング陽性率が30%という報告がありました。30%というのが気にかかります。現場での感覚ですが、かなりの割合で読み書き障害、LDの子が多いと思っています。このあたりも調査をしていきたいと思います。