福島研究室Fukushima Laboratory

研究室について

研究の理念と目的

 私たちの社会には障害者・高齢者を含む多様な人々が生活しています。これらすべての人々にとってバリアの少ない社会を構築していくことは、現代に生きる私たちの共通の課題であり、学問を通じた社会貢献を目指す大学の使命でもあります。
 こうした観点から私たちの研究室では、公正で豊かな社会を支えるバリアフリーの理念を、様々な領域の研究の蓄積に基づいて提示するとともに、具体的な問題の解決を当事者の視点から推進していく研究拠点作りを進めています。

 一般的なバリアフリー研究は障害者の心身機能の代替や物理的バリアの除去を目指すものが主流であり、この文脈では、医療技術に加えて、工学系科学技術が果たしてきた役割はきわめて大きいものです。ただし、科学技術が実際に流通し利用される場は社会であり、そもそもそうした科学技術の研究・開発が行われる場もまた社会であるわけですから、バリアフリー研究はこうした社会的な要因や背景についての分析を含まざるをえません。
 また、私たちは様々な制度や他者との関係の網の目の中で生きているわけですが、そうした制度や他者との関係性自体が多くのバリアを形作っています。たとえば、手話を使うろう者にとって、音声言語のみによってコミュニケーションがなされている場面では言語情報にアクセスすることができませんし、自立した生活を送ろうとしている障害者にとっては、得られる所得や利用可能なサービスの量と質次第でライフチャンスが大きく制約されてしまいます。

 私たちの研究室では、こうしたバリアの多様な生成メカニズムを踏まえて、人と人、人と制度、人と科学技術の関係を含む社会的バリアの解消を主要なテーマとして、多角的なアプローチを行っています。

研究室の特徴

 私たちの研究室は、研究スタッフと事務・支援スタッフとで構成されています。

 研究スタッフとしては、障害当事者を含め、社会に存在するバリアに対して自覚的で、様々な領域(障害学・教育学・心理学・社会学・支援技術論等)の専門性を有する人材が集まっており、それぞれの手法でバリアフリー研究に取り組んでいます。その中では、障害当事者にとってのバリアの経験を思考の出発点にしながら、研究者同士で学問領域の垣根を越えた率直な意見交換と相互批判を行い、それを通じて研究の前提や背後仮説を常に問いなおしていくことで、質の高い研究成果の創出を目指しています。

 また、障害のある研究者の研究活動を支える支援スタッフの存在も、私たちの研究室の大きな特徴です。障害者が研究活動を行うに当たっては情報処理や移動、コミュニケーション等にまつわる様々なバリアが存在しており、そうしたバリアの存在はこれまで障害当事者主導のバリアフリー研究があまり進んでこなかった一因となっています。こうしたバリアを解消するための人的支援を行うため、私たちの研究室では研究領域に応じた専門的技能と障害支援の知識や経験を持った多才な支援スタッフが、障害のある研究者の活動を支えています。つまり、支援スタッフはいわば「バリアフリー研究のためのバリアフリー」を担う人材です。

 さらに、全学的な組織としての「東京大学バリアフリー支援室」とも密接に連携し、その意味でも研究活動と支援業務との補完的で相互協力的な関係が成立しています。このように、私たちの研究室における日々のバリアフリー研究は、実はそれ自体が1つのバリアフリー実践にもなっており、そこから新たな研究テーマの創出へとつながっていくことにもなるのです。