福島研究室/バリアフリープロジェクトFUKUSHIMA Lab. Barrier Free Project

マンスリーレポート

東京大学内キャンパスバリアフリー化の取り組み
-駒場Iキャンパスにおける誘導ブロック設置検証

東京大学は、全学バリアフリーの推進に取り組んでいます。福島研究室は、全学バリアフリー化におけるユーザー及び専門研究者の立場からの協力を続けてきました。なかでも、キャンパス内外のバリアフリー化を本学のバリアフリー支援室との綿密な連携を通じて積極的に取り組んできました。たとえば、視覚障害者が使いやすい誘導ブロックの設置や車椅子ユーザーのためのスロープまたは自動ドア、エレベーターなどの設置の必要性や、実際の設置場面において、障害を持つ学生や教職員が各建物や施設にアクセスしやすくするために、障害当事者の意見や専門研究者の意見を取り入れ、安全で利便性高く効率よいキャンパス 生活ができるよう設置担当の施設部との連携を深めています。

ところが、こうした取り組みには、予算等様々な制約や、緊急度の高い順に行われるなど、行われる時期も一定ではないため従来の検証の際に行われた一連の営み(試行錯誤など)が必ずしも次の検証の際に十分に生かされたとはいえません。また、ユーザーや専門研究者の意見が必ずしも正確には反映されないケースが多くありました。ユーザーにとって使いやすい、アクセスしやすいキャンパス作りのためには、先行検証において行われた様々な試行錯誤を含めたノウハウを十分に活用してこそ、よりバリアの少ない環境づくりが実現できるのではないかと思います。こうした考えを念頭において行われた今回の本学駒場Iキャンパスにおける誘導ブロック検証の一連の流れをここに紹介したいと思います。

検証の経緯

平成18年4月より駒場Iキャンパスの保険センターにヘルスケアルームが新設され、ヘルスキーパーとして視覚障害者の職員が2名採用されました。これに伴い、バリアフリー支援室より、ヘルスケアルームから最寄り駅である駒場東大前駅、駒場Iキャンパス正門、保険センターを結ぶ誘導ブロックの設置を要望し、これを受けた教養学部施設部では、駒場Iキャンパス全体の移動の円滑化を図り、計画的にキャンパスバリアフリー化を進めることとなりました。そこで、正門を背にしてその正面にある1号館までの誘導ブロックの敷設ルートを検討することとなりました。

福島研究室の誘導ブロック検証への参加

そこで、福島研究室は、今回駒場Iキャンパスにおける誘導ブロック設置の第1段階の検証として、バリアフリー支援室より依頼を受け、東京大学キャンパス計画室長をはじめ、施設課、教務課、学生支援課の関係者や建築専門研究者、そして、バリアフリー支援室の職員と共に、福島研究室内の全盲当事者研究者3人と研究協力者1人、他の部局の全盲当事者研究者1人、伊福部研究室の車椅子使用者1人及び各障害研究者の支援者、というメンバーで検証に参加しました。
(図1 検証参加メンバーの関係図)
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今回の検証は、「検証現場の事前確認」、「事前意見交換会」、「本検証会」、「検証後の施設部への報告書作成」のような一連の流れに沿って行われました。以下に、それぞれの詳細を記します。

1.「現場の事前確認」
(1)参加者
現場の事前確認は10月4日に、建築専門研究者と視覚障害支援関係者、福島研究室の全盲当事者研究者3人とバリアフリー支援室の全盲職員及び各障害研究者の支援者で行われました。

(2)既存の誘導ブロックの問題点
正門から右端に沿ってアドミニストレーション棟に向かって敷かれている誘導ブロックを実際に歩いて確認したところ、いくつかの問題があることが分かりました。
A.誘導ブロックがロータリーに沿って斜めに敷かれている
視覚障害者にとって、クランク上のブロックは角度の曖昧さによって現在地の確認が取りにくいため方向を失う恐れが大きく、目的地まで正しく歩行できなくなる可能性が大きいです。
(写真1 クランク上の誘導ブロック)
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B.路面と誘導ブロックとの区別がしにくい
既存のブロック周辺の路面はタイル上ででこぼこしており、誘導ブロックと路面との区別がしにくく、そのため誘導ブロックから外れたことに気づきにくく、誘導ブロックに沿った歩行が困難になる恐れがあります。
(写真2 でこぼこした路面と誘導ブロック)
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C.誘導ブロック周辺に障害物が多い
既存の誘導ブロックは縁石沿いに道の端に寄せてしかれていることもあり、視覚障害者が誘導ブロックの上を歩行する際、看板(写真3-1)や壁のでっぱりに衝突する恐れがあります(写真3-2)。
photo3-1.jpg photo3-2.jpg
(3)正門から1号館までの道の状況
正門と1号館は1直線の距離にありますが、正門と1号館の間の中央には、大きな円形の植え込みがあります。そのため、誘導ブロックを直線に敷くことができません。
(写真4 正門と1号館の間の植え込み)
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(4)敷設方法の提案
前述の現場の状況により、視覚障害当事者からは植え込みを避けて1号館までに到達する方法としていくつかの提案がありました。
A.円形の植え込みを囲む正方形に敷設する方法
1つは、駒場東大前駅から正門の守衛室まで敷かれている誘導ブロックに継続させて直線に1号館に向けて敷き、円形の植え込みの前で両脇に分岐させ、正方形に植え込みを囲み、1号館植え込みの中央から1号館の正面の階段に向けて直線に敷く方法です。
B.中央の植え込みの右変を削り直線に敷設する方法
これは、先ほどの守衛室からのブロックを直線に続けさせ、その直線状から右変の植え込みを削ってもらい、誘導ブロックをそのまま直線に続けさせ、植え込みを過ぎたところで左折し植え込みの中心円から1号館の正面の階段に直線に導く方法です。
C.円形植え込み前後にそれぞれ敷設する方法
これは、正門の守衛室から円形の植え込みまで直線に導いた後、そこから両脇に分岐させ、植え込みの両辺のところで終了するT字型に敷設し、植え込みの1号館側でも1号館の正面から植え込みに向かい植え込みの両脇に向けてT字型を描くような敷設方法です。

2.「事前意見交換会」

意見交換会は、事前現場確認後同日に行われました。参加者も現場確認メンバーと同様です。意見交換会では、個別の誘導ブロック敷設方法に関する事項とキャンパスバリアフリー化のための一連の検証に関する事項について交わされました。

(1)誘導ブロック敷設に関する意見
事前現場確認の際に出された提案を本検証の際に、施設部を始めとするキャンパス計画関係者に提示し、一通りデモンストレーションすることで、視覚障害者が道を歩く際にどのようなニーズがあるのかを理解してもらうという意見が出されました。

(2)検証全体の流れに関する意見
検証全体の流れに関する意見については、各期間や立場に応じた役割分担の必要性、バリアフリー支援室を中心とした検証過程のシステム化の必要性などが挙げられました。また、各検証会を通して得られた結果をデータ化していく必要性についても強調されました。そして、施設部への的確な報告と改善実行の確認の必要性や、一連の検証過程を構築することの必要性についての意見が出されました。

3.「本検証会」

平成18年10月19日に、キャンパス計画室長をはじめ、施設課、教務課、学生支援課の関係者や建築専門研究者並びに視覚障害者支援関係者及びバリアフリー支援室の職員と共に、福島研究室内の全盲当事者研究者2人、他の部局の全盲当事者研究者1人、伊福部研究室の車椅子使用者1人及び各障害研究者の支援者などなど、様々な立場の方々のメンバー構成で駒場Iキャンパスの誘導ブロック敷設の検証が行われました。

まず、バリアフリー支援室からの検証に当たるまでの経緯が説明され、これまでの既存の誘導ブロックの問題点に関する再確認を行い、正門から1号館までの誘導ブロックの付設方法を検討しました。様々な検証を行った結果、図2の「正門から1号館までの誘導ブロック敷設案」のような敷設方法に意見が一致しました。これは前述の1.「検証現場の事前確認」の(4)で提案されたA.の方法です。この方法は、普段駒場Iキャンパスを利用する視覚障害を持つ学生、教職員のみならず、初めて駒場Iキャンパスに訪れた視覚障害者にとっても分かりやすい敷設方法として意見が一致しました。また、施設関係者に対しては、今後、キャンパスにおける誘導ブロック敷設などの際には、必ずバリアフリー支援室を通して、ユーザーの声がより反映されやすくすることを提案し、快諾を頂きました。
(図2 正門から1号館までの誘導ブロック敷設案)
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4.「検証後の施設部に対する報告書作成」及びデータベース構築

今回の検証で明らかになったルートや誘導ブロック敷設の際の注意点などを記載した報告書を、バリアフリー支援室を中心とした建築専門研究者や福島研究室が協力して報告書を作成しているところです。また、今回の検証会で明らかになった問題点や有効な方法をデータベース化して今後の検証に応用していきたいと思っています。

今後の課題

今回の検証で行われた一連の方法は、まだシステム化には不十分なところが多くありますが、福島研究室では、今後得られたデータを集積し、データベース化を通して、少しずつ改善していくことで、キャンパスバリアフリー化におけるマニュアル作成ができるように努力していきたいと思っています。

文責:全 英美